「この学校で本当に良かったのか」「もっと関わっておけば良かった」——進路選びでの後悔は、志望校の選択よりも、親の関わり方に関するものが多いです。
塾で多くの受験生と保護者を見てきた中で感じるのは、「後悔しない進路選び」には2つのポイントがあるということです。1つは軸を持つこと。もう1つは親子関係を壊さない距離感を保つことです。
今回は、中学1年生から受験直前期までを見据えて、保護者の方に知っておいてほしいことをお伝えします。
1. 「軸」を持つことが、なぜ大事なのか
進路選びにおける「軸」とは、志望校を選ぶときの判断基準のことです。
- 「この部活があるところに行きたい」
- 「このくらいの偏差値帯の学校がいい」
- 「特進コースで頑張りたい」
- 「校風が自分に合っている」
軸は人それぞれです。大事なのは、何でもいいから軸を持つことです。
軸がないとどうなるか
軸がない状態で受験期を迎えると、こんなことが起こります。
- 直前期にバタつく:「やっぱりあの学校のほうが…」と志望校が揺れる
- 後半の伸びが小さい:何のために勉強しているかわからず、モチベーションが続かない
- 親が不安になる:「この子は大丈夫なのか」と口出しが増える
逆に、軸がある子は最後まで走り抜けます。「この学校に行きたい」という具体的なイメージがあるから、辛いときも踏ん張れるのです。
軸の作り方
軸は、対話の積み重ねと実際に学校へ行くことから生まれます。
中1からでも早すぎることはありません。日常の中で自然に「将来どうしたい?」「どんな高校生活を送りたい?」と話してみてください。改まって「進路会議」をする必要はありません。
ただし、神奈川の高校入試は中2から内申点が本番に直結します。中2になったら、より具体的に志望校を意識し始める必要があります。
そして、実際に学校を見に行くことが大切です。パンフレットやWebサイトではわからない「全体の雰囲気」を感じてください。生徒の様子、先生の雰囲気、校舎の空気感——これらは行かないとわかりません。
ただし、夏休みに学校見学に行きまくるのは避けてください。情報が多すぎると比較しすぎて決められなくなります。ある程度絞ってから見に行くのがおすすめです。
2. 天秤にかけて決める
軸ができたら、次は条件を天秤にかけて取捨選択します。
よくある天秤は:
- 偏差値 vs 校風:偏差値は高いけど校風が合わない、など
- 通学時間 vs 学校の魅力:遠いけど行きたい学校がある
- 本人の希望 vs 親の希望:親が望む学校と子が望む学校が違う
- 安全圏 vs チャレンジ:確実に受かる学校か、挑戦するか
すべてを満たす完璧な学校はありません。軸があれば、何を優先するかが決まります。
「保険をかける」ことの意味
「安全圏 vs チャレンジ」で迷う方は多いです。
私がお伝えしたいのは、「保険をかける」ことで、安心してチャレンジできるということです。
安全校という選択肢を持たずにチャレンジだけを考えると、親も子も不安でいっぱいになります。「落ちたらどうしよう」という恐怖が勉強の邪魔をします。
でも、「ここなら大丈夫」という安全校があれば、思い切ってチャレンジできます。保険は逃げではありません。挑戦するための土台です。
そして、もしチャレンジして結果が出なかったとしても——高校受験がすべてではありません。人生は長いです。全戦全勝で生きていく人はいません。その経験も、お子さんの成長につながります。
3. 親の不安との付き合い方
ここからは、保護者の方自身の話をします。
お子さんの受験期、親も不安になって当然です。むしろ、不安にならない親はいません。
不安になるタイミング
特に不安が高まるのは、夏休みと直前期の勉強の様子を見たときです。
- 家で何をしているかわからない
- 思ったより勉強していないように見える
- スマホばかり触っている
- 本人がのんびりしすぎている(または逆にピリピリしている)
こういう場面を見ると、「大丈夫なの?」と言いたくなります。
不安の正体
親の不安の正体は何でしょうか。
- 「この子の将来が心配」
- 「自分の子育てが問われている気がする」
- 「周りの目が気になる」
- 「失敗させたくない」
これらすべてが混ざり合っています。そして、この不安は当然のことです。お子さんのことを真剣に考えているからこそ、不安になるのです。
正直に言えば、不安にさせてしまう塾にも責任があります。もっと頻繁に状況をお伝えすべきですし、保護者の方のサポートも私たちの仕事です。
塾では、お子さんの集中具合や過去問・予想問題への取り組みを見ています。気になることがあれば、遠慮なく塾にお問い合わせください。お子さんに直接聞くより、塾に聞いていただいたほうが、親子間の余計な摩擦を避けられます。
4. 親子関係を壊さない関わり方
進路選びで後悔する親の多くは、「関わり方」で後悔しています。
- 口出ししすぎて関係が悪くなった
- 不安をぶつけてプレッシャーを与えてしまった
- 一方的に話して、子どもの気持ちを聞かなかった
これらを避けるためのポイントをお伝えします。
やってはいけないこと
- 一方的に話す:親の考えを押し付けない
- 不安をぶつける:「大丈夫なの?」を繰り返さない
- 他の子と比較する:「〇〇ちゃんは…」は禁句
- 伸び悩んでいるときに焦る:成績の上下に一喜一憂しない
対話のコツ
子どもと進路について話すときは、しっかり時間を使って座らせることが大切です。
「ちょっと話がある」と改まって、話す体制を作ってください。立ち話や「ながら」での会話では、本音は出てきません。
そして、親は「聞く姿勢」でいること。先に自分の意見を言わない。子どもが話し終わるまで待つ。これが難しいのですが、とても大切です。
「別に」「どこでもいい」としか言わない子もいます。そういうときは無理に聞き出そうとせず、また別の機会に話してみてください。一度で決まらなくても大丈夫です。対話は積み重ねです。
まとめ:知ること、理解することが大事
後悔しない進路選びのために、覚えておいてほしいことをまとめます。
- 軸を持つ:何でもいいから判断基準を作る。軸があれば迷わない
- 天秤にかける:すべてを満たす学校はない。軸に沿って取捨選択する
- 保険をかける:安全校があれば、安心してチャレンジできる
- 不安は当然:親が不安になるのは普通のこと。一人で抱えないで
- 距離感を保つ:口出ししすぎず、でも見守っている。その絶妙なバランスを
- 塾を頼る:勉強のことは塾に聞いてください。私たちも保護者をサポートします
知ること、理解することが大事です。
お子さんの状況を知る。高校入試の仕組みを理解する。そして、自分自身の不安の正体を理解する。
それができれば、適切な距離感で見守ることができます。そして、進路選びで後悔することはなくなります。
何かご不安なことがあれば、いつでもご相談ください。保護者の方へのサポートも、私たちの大切な仕事です。